溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
***

「あー、えっと……。そうだっ! ちゃ」

「ちゃ?」

「ちゃ……ちゃっちゃと朝食にしちゃいましょう! きっと今日も【ピーカンなお天気】ですっ。いつまでも布団にいちゃダメです。お日様の光を浴びて元気に目覚めましょう!」

 会話している時点でとっくに目なんて覚めているのだが。
 ぎくしゃくとした足取りで不破(ふわ)から離れると、日和美(ひなみ)は不自然に視線を逸らしながらそう告げてシャーッ!とリビングのカーテンを開ける。

「あ……」

 そうして目にした窓外の景色は、日和美の言葉に反して数メートル先も煙ってしまうような土砂降りの悪天候だった。

「……雨ですね」

 不破がポツンとつぶやいたのを華麗に(?)スルーして、日和美は言葉をつむぐ。

「えっと……きょ、今日はあれです。写真! い、一緒に写真を撮って……現像しちゃいましょう!」

 昨日は結局何だかんだ寄り道をし過ぎて写真を撮るまで話が至らなかった二人だ。

 幸い家にはプリンターもパソコンもある。
 最近のスマートフォンはカメラ機能も結構いい。

 二人で写真を撮って印刷して……その写真を不破に渡せば万事OKだ。

(もちろん、私もパスケースに忍ばせて……。ふふふ)

 不破の写真が手に入ると思ったら自然表情筋が緩んでニマニマしてしまった日和美だったけれど、不破が病院で話してくれたことを忘れたわけではない。

 いやむしろ。

 ルティの一件があってから、その必要性を一層強く感じてしまったくらいなのだ。

 不破の記憶が戻ってくるのはそれほど遠い未来ではない気がして、すごく不安で。

 忘れられても一緒にいたことを証明できる何かが欲しいと日和美が熱望してしまったのも仕方ないことだろう。
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