溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
 しょうが焼きを一人前ずつ皿に盛りつけてリビングのローテーブルに並べて。
 買ってきたばかりの【夫婦茶碗】にご飯をよそって二人でお行儀よく「いただきます」をする。

 不破(ふわ)(と日和美(ひなみ))が寝起きした布団はえっちらおっちら日和美が頑張って禁断の(その)――和室(しんしつ)――に移動済みなのでリビングはいつも通りそこそこに広々としているのだけれど。

 横並びに座って、不破のすぐそばで朝食を食べるとなると何だか緊張してしまった日和美だ。


「私にとっては記憶を失くしてる不破さんの方がもっとしんどいと思います」

 綺麗な所作で味噌汁をかき混ぜる不破を横目にさっきの話の続きみたいにつぶやいたら、「日和美さんが良くしてくださるので案外平気なんですよ?」と穏やかな笑みを返される。

(社交辞令だとしても、不破さんってば何て優しいの!)
 そう思った途端、それと引き換えのように日和美の中でルティのことを黙っているのが申し訳ないという気持ちがぶわりぶわりと増してくる。

(写真……。写真を撮ったらちゃんと話そう)

 もしも不破が一人暮らしで……ルティが自分では何も出来ない庇護のいるような存在――犬や猫のような――だったら、今こうしている間にもお腹を空かせて鳴いているかも知れないではないか。

 ひじきの煮物を口にしながら、日和美は今更のようにそんなことを思った。
< 76 / 271 >

この作品をシェア

pagetop