溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
 何にせよ、もうしばらくは不破(ふわ)との同棲生活が続けられそうなことにホッとした。


***


 あれから数日。

「じゃあ、行ってきますね」

 いよいよ日和美(ひなみ)が社会人としての第一歩を踏み出す日がやってきた。

 身元は定かでないまでも、そんな自分でも出来る仕事を探したいと申し出てきた不破に、そんなに焦って無理なさらなくてもいいのにと思いつつも、不破自身に直で繋がる連絡先の必要性は感じた日和美だ。

 思い立ったら動かずにはいられない性分(しょうぶん)
 日和美は、写真を撮った翌日には不破とともに自分が使っている携帯キャリア――docono(ドコノ)ショップに出向いて、もう一台携帯電話を契約したのだけれど。

 機種はほぼ無料に近いもので勘弁してもらった日和美だったのに、実際与えられてばかりの不破からは恐縮されまくりで。

「本当にすみません」

 そう眉根を寄せられた時にはびっくりしてしまった。

「私が不破さんと連絡取りたくて勝手にしてることです。謝らないで?」

 不破をなだめながらも、彼の言いたいことが痛いほど分かる日和美だ。
 もし逆の立場だったなら、日和美だって相手に対して負い目ばかり感じてしまっただろうから。

「本当、一日でも早く何か仕事をみつけないと、今の僕って、完全に日和美さんのヒモ状態ですもんね」

(ひ、ヒモ!?)

 ちょいちょい思うのだが、不破は彼の外観イメージに合わない意外な言葉を結構知っている。
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