溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
(7)秘密の花園
 日和美(ひなみ)が仕事へ行って、不破(ふわ)は記憶喪失になって初めて。
 全くのひとりになった。

 数日間日和美と暮らしてみて分かったのは、彼女がとても家庭的な女性であるということ。
 何の影響か、妙に夢見がちなところがあって、時折びっくりするくらい突飛な発言をすること。
 面倒見がいいあまり、やたら気前が良過ぎる嫌いがあること。
 どうやら自分のことを気に入ってくれていそうなこと。

 それから――。

 そこまで思いを巡らせてから、不破は日和美を見送った際、彼女を安心させるために鞄から取り出して見せたアルバムに視線を落とした。

 ポリプロピレン製の半透明な表紙が付いたL版サイズのアルバムには、小口側にペッチン留めのスナップボタンが付いていて閉じられるようになっていた。
 ポケットは全部で十ポケットあって、写真を裏合わせにして二枚ずつポケットに入れていけば、計二十枚ほど収められる仕様だ。

 不破は裏に書いたメモ書きも見たいので、ひとつのポケットにつき一枚ずつしか収納する予定はないのだが、そもそも今はまだ中へ入れられる写真自体が一葉しかない。

 スナップボタンを外して写真を眺めた不破は、日和美の顔の輪郭(りんかく)を指先でそっとなぞってみる。

(可愛いな)

 ショートカットが似合う日和美は、目がクリクリっと大きなパッチリ二重さんだ。
 化粧は控えめだが、元々の造形がいいのでむしろその方が似合っていて清楚なイメージ。
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