それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「クラスとして、数学の学力強化に取組もう」

ゴールデンウィーク明け、高校三年生になって初めて受けた模試の結果が返却された際、クラス全体に向かって提案したのは中野先生だった。
なんといっても、学年五クラスのうち、私たちのクラス一組は、数学の平均点が他のクラスよりも圧倒的に低かったらしい。

「これから毎日課題を解いて、ノートを提出するように」

中野先生の提案が採用されー誰も“反対”とは言い出せなかっただけだと思うけれどー課題ノートを毎日提出するようになって以来、ノートチェックを行うのは畑中先生の仕事で、その課題ノートに先生の一言コメントが付き始めたのは、つい数日前からだった。


「……読んでない」

「いや、それは嘘だろ」

「ほんとだって」

「コメントって何?」

美羽が横から尋ねる。

「あー、吉川、数学がダントツで苦手で、全体の成績の足を引っ張っているから、俺が解き方について有意義なアドバイスを書いてやってるんだ」

「待って、有意義なコメントなんてもらったことないんですけど」

私は口を挟む。

「【授業中は寝るな!!】とか、【朝礼の時ぐらい人の話を聞け!!】とか、文句しか書いてないじゃん!!」

「あ、嘘ついた~~~!」

先生はニヤッと笑う。

「読んでないとか言ってたくせに、きちんと読んでるじゃん!!」

……。

ひっかけられた……。
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