甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
この会話はなに?


私たちの関係は計画されたものだったの? 


すべては郁さんの手の内だった?


私を好きだと言ったのも、自分の目論見を成功させるためだったの?


目の前が真っ黒に染まった気がした。


これは現実?


やっぱり『私』は不要で、『評判を上げる妻』と『赤ちゃん』だけが必要だったの?


……だから、ずっと優しかったの?


無事に出産をしてほしいから、私が『大切』だった?


「大切、の意味が違ったんだ……」


思わずこぼれ落ちた声は、扉の向こうのふたりには届かず、ただ私の愚かな自惚れを認めるだけだった。


『甘いわね、好きとかそんな不確かな気持ちだけで大企業の妻が務まると思っているの? まさかあなた、郁に愛されて望まれて結婚したと本気で信じているわけ?』


『本来なら長男の悠さんが副社長に就任するはずだったのよ。でも自身はいずれ会社を離れるつもりだからと海外支社の社長になったの。後を継ぐ郁に万全の状態ですべてを引き渡せるようにね』


『どこかの企業の跡取り娘ではない、従順な一般の女性を郁はずっと切望していたのよ』


以前、飯野さんから言われた言葉が脳裏に蘇る。


――全部真実だったんだ。


私はなんて、馬鹿だったんだろう。


どうして愛されているなんて思ったのか。

そもそも彼と私とでは立場が違いすぎた。

そんな私を、こんな不自然な結婚を名家のご家族が受け入れてくれたのも、すべては彼の勝算と思惑があったからだった。
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