甘やかし婚 ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「そうだな、でも婚約者を守るのは俺の役目だ。そもそもなんで逃げた?」
「逃げてません。今日は風間さんにお礼を言いに来ただけでしたし、お忙しそうだったので」
言い訳だとわかっている。
けれど顔を合わせる心づもりができておらず、戸惑ったから逃げたなんて言えるわけがない。
「沙也」
ほんの数秒前の剣呑さが嘘のような甘い声で名前を呼ばれる。
「なんで、逃げた?」
「……まだきちんと答えが出ていないんです」
再び問われ、思わず本音が漏れる。
「なんの答えだ?」
「響谷副社長に先日申し込まれた件すべてです」
「俺は冗談で求婚はしない。なにより沙也に嘘はつかない」
「でも私たちは出会ったばかりだし、この展開はどう考えてもおかしいです」
いくら結婚相手が必要とはいえ、一分一秒を競うほど急いているとは思えない。
「――好きだから」
「……え?」
「そう言えば納得するのか?」
骨ばった指が私の前髪を軽く梳く。
微かに額に触れる感触に心がざわめく。
口調は厳しいのに、私を見つめる目はどこか自信なさ気に揺らいでいる。
なんでそんな目をするの?
「沙也がほしいと言えば信じるのか?」
「だから、どうしてそんな言い方ばかりするんですか?」
「じゃあなぜお前は俺の言葉を信じようとしない?」
質問に質問で鋭く切り替えされ、返答に詰まる。
「出会ったばかりの、よく知りもしない人の台詞を簡単に受け入れられません」
「よく知っている恋人に手ひどい目にあわされたのにか?」
冷たい声音に、心が氷水を浴びたように一気に冷える。
的を射た発言に反論すらできない。
「逃げてません。今日は風間さんにお礼を言いに来ただけでしたし、お忙しそうだったので」
言い訳だとわかっている。
けれど顔を合わせる心づもりができておらず、戸惑ったから逃げたなんて言えるわけがない。
「沙也」
ほんの数秒前の剣呑さが嘘のような甘い声で名前を呼ばれる。
「なんで、逃げた?」
「……まだきちんと答えが出ていないんです」
再び問われ、思わず本音が漏れる。
「なんの答えだ?」
「響谷副社長に先日申し込まれた件すべてです」
「俺は冗談で求婚はしない。なにより沙也に嘘はつかない」
「でも私たちは出会ったばかりだし、この展開はどう考えてもおかしいです」
いくら結婚相手が必要とはいえ、一分一秒を競うほど急いているとは思えない。
「――好きだから」
「……え?」
「そう言えば納得するのか?」
骨ばった指が私の前髪を軽く梳く。
微かに額に触れる感触に心がざわめく。
口調は厳しいのに、私を見つめる目はどこか自信なさ気に揺らいでいる。
なんでそんな目をするの?
「沙也がほしいと言えば信じるのか?」
「だから、どうしてそんな言い方ばかりするんですか?」
「じゃあなぜお前は俺の言葉を信じようとしない?」
質問に質問で鋭く切り替えされ、返答に詰まる。
「出会ったばかりの、よく知りもしない人の台詞を簡単に受け入れられません」
「よく知っている恋人に手ひどい目にあわされたのにか?」
冷たい声音に、心が氷水を浴びたように一気に冷える。
的を射た発言に反論すらできない。