甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「軽い気持ちでも、誰でもいいわけじゃない。お前だから申し込んでる」


色香のこもった声と真剣な眼差しに動けなくなる。

長い指が私の頬にそっと触れた。


「すぐに次の恋愛相手が見つからないと嘆くなら、俺にしておけ」 


吐息交じりに耳元で囁かれ、背筋に痺れがはしる。

あんな売り言葉に買い言葉のような台詞を聞き流さないなんて、この人はなんて強かなんだろう。

しかもとびきりの誘惑までつけてくるなんてズルすぎる。


「結婚願望はあっても、策略的な結婚はお断りです」


「――倉戸(くらと)沙也さん」


必死に自分を保って絞り出した拒絶にかぶせて、彼が私のフルネームを口にする。

ドクンと心音が大きく鳴り響く。


「俺がお前を一生甘やかす」


骨ばった指が私の髪をさらりと優しく梳く。

肩下十センチほどの、真っすぐな焦げ茶色の髪が彼の指の間からこぼれ落ちていく。

最後のひと房を軽く握りしめ、毛先にキスを落とす。

髪から離れた指が私の顎をゆっくり掬い上げる。

前髪が触れるほどの近い距離から妖艶な眼差しを向けられ、魅入られたかのように体が動かない。
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