甘やかし婚 ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「――驚かせたか?」
営業部長に見送られ、エレベーターに乗り込んだ途端、副社長の雰囲気がガラリと変化した。
関さんは彼の指示で、一足早く駐車場におりていた。
「当たり前です。なんでこんな真似を……」
「電話の声だけじゃ、沙也の現状がわからなかったからな。勢いで俺との結婚を了承したものの、冷静になって辞めると言い出されたら困る」
「私が結婚を撤回しないかわざわざ確認に来られたんですか?」
ほんの少しイラ立ちを覚え問いかける。
いくらなんでも、一度引き受けた話を簡単に反故にする気はない。
「撤回させる気はまったくないが、勤務先に知らせたほうが周囲を牽制できるだろう? 沙也の妙な噂も抑えられる」
さらりと物騒な台詞を口にして、私の正面に回り込んだ彼がトンと私の肩を押す。
背中がエレベーターの固い壁にぶつかる。
そっと副社長が私の頬に長い指で触れる。
もう片方の手を私の頭のすぐ横の壁に置かれ、目を見開いた。
「……沙也、口調が戻ってるぞ」
「す、すみません、気をつけます」
「違う、畏まった言葉遣いはいらない。沙也は俺の妻になるんだから」
堂々と宣言する姿に心が乱される。
「ですが、ここは会社なので……」
「相変わらず真面目だな」
副社長は頬に触れていた指をゆっくり離し、私のほつれた髪をひと房すくってあやすように耳にかける。
骨ばった男性の指の感触に頬がカッと熱をもつ。
微かに触れる吐息がくすぐったい。
まるで恋焦がれるかのような熱い眼差しに、喉がカラカラに乾いていく。
営業部長に見送られ、エレベーターに乗り込んだ途端、副社長の雰囲気がガラリと変化した。
関さんは彼の指示で、一足早く駐車場におりていた。
「当たり前です。なんでこんな真似を……」
「電話の声だけじゃ、沙也の現状がわからなかったからな。勢いで俺との結婚を了承したものの、冷静になって辞めると言い出されたら困る」
「私が結婚を撤回しないかわざわざ確認に来られたんですか?」
ほんの少しイラ立ちを覚え問いかける。
いくらなんでも、一度引き受けた話を簡単に反故にする気はない。
「撤回させる気はまったくないが、勤務先に知らせたほうが周囲を牽制できるだろう? 沙也の妙な噂も抑えられる」
さらりと物騒な台詞を口にして、私の正面に回り込んだ彼がトンと私の肩を押す。
背中がエレベーターの固い壁にぶつかる。
そっと副社長が私の頬に長い指で触れる。
もう片方の手を私の頭のすぐ横の壁に置かれ、目を見開いた。
「……沙也、口調が戻ってるぞ」
「す、すみません、気をつけます」
「違う、畏まった言葉遣いはいらない。沙也は俺の妻になるんだから」
堂々と宣言する姿に心が乱される。
「ですが、ここは会社なので……」
「相変わらず真面目だな」
副社長は頬に触れていた指をゆっくり離し、私のほつれた髪をひと房すくってあやすように耳にかける。
骨ばった男性の指の感触に頬がカッと熱をもつ。
微かに触れる吐息がくすぐったい。
まるで恋焦がれるかのような熱い眼差しに、喉がカラカラに乾いていく。