甘やかし婚 ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
六月も半ばを過ぎ、先週梅雨入りをしたばかりの都内は朝から雨が降り続いている。
湿度も高く、肌がべたつく感じが否めない。
かるく水滴を払った傘を畳み、勤務先の株式会社佐月製菓のエントランスに足を踏み入れる。
ロッカールームに寄って荷物を置き、エレベーターで五階に降りる。
日本橋にあるこの自社ビルの総務フロアが私の仕事場だ。
「おはようございます、沙也さん」
自席に着くとすぐ、入社五年目の後輩、井口由衣ちゃんが出社してきた。
彼女の席は私の右隣だ。
「おはよう、由衣ちゃん」
「酷い雨ですね、髪もボサボサです」
顎下で軽く巻かれた茶色い髪を耳にかけつつ、後輩が眉間に皺を寄せる。
百五十八センチの私より少し低い身長に大きな目が特徴の由衣ちゃんは、その可愛らしい見た目に反して常にはっきりと意見を口にする。
「そう? 綺麗なカールが出てるわよ」
「いえ、この辺りが崩れてます。こんな天気の日でもさらさらのストレートヘアの沙也さんが羨ましいです」
そう言って後輩は、私の髪を見る。
それを言うなら、垂れ目がちの母譲りの二重の私には由衣ちゃんの丸い大きな目のほうが何倍も羨ましいのだけれど。
湿度も高く、肌がべたつく感じが否めない。
かるく水滴を払った傘を畳み、勤務先の株式会社佐月製菓のエントランスに足を踏み入れる。
ロッカールームに寄って荷物を置き、エレベーターで五階に降りる。
日本橋にあるこの自社ビルの総務フロアが私の仕事場だ。
「おはようございます、沙也さん」
自席に着くとすぐ、入社五年目の後輩、井口由衣ちゃんが出社してきた。
彼女の席は私の右隣だ。
「おはよう、由衣ちゃん」
「酷い雨ですね、髪もボサボサです」
顎下で軽く巻かれた茶色い髪を耳にかけつつ、後輩が眉間に皺を寄せる。
百五十八センチの私より少し低い身長に大きな目が特徴の由衣ちゃんは、その可愛らしい見た目に反して常にはっきりと意見を口にする。
「そう? 綺麗なカールが出てるわよ」
「いえ、この辺りが崩れてます。こんな天気の日でもさらさらのストレートヘアの沙也さんが羨ましいです」
そう言って後輩は、私の髪を見る。
それを言うなら、垂れ目がちの母譲りの二重の私には由衣ちゃんの丸い大きな目のほうが何倍も羨ましいのだけれど。