甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「……私の両親だけではなく郁さんのご両親にはお話したの?」


「ああ、軽く伝えておいた」


「軽くって……反対されなかったの?」


大企業を今後引き継ぐ息子の突然の結婚に驚かないはずがない。


「反対どころか、歓迎された。先に入籍する件はずいぶん渋られたがなんとか押し切った」


「やっぱり……」


どこの馬の骨ともわからない娘といきなり結婚なんて、と思われたに違いない。

彼ほどの立場の人なら、きっと相手の素性などを親族の皆さんはきちんと調べ上げるのだろう。


「言っておくが、婚姻届けの証人欄を書きたいというだけだからな」


「え?」


「俺の選んだ伴侶が反対されるわけないだろう」


彼の自信はいったいどこからきているのだろうか。

今後のご実家への挨拶が不安で仕方ない。

混乱している間に、車が自宅マンションに到着した。

とりあえず降りようとすると、なぜか彼が先に出て私を促す。


「俺も一緒に行く」


「……荷物を持ち出すだけよ」


肩を竦め、逃げないとアピールする。


「部屋を見てみたいんだ」


なぜか楽し気に目を細める彼に小さく嘆息し、自室に向かう。

鍵を開け、彼に上がってもらい、キャリーバッグを取り出す。

当面の着替えや通勤着、スーツ、化粧品類や本など必要なものをどんどん詰める。

私が手を忙しなく動かしている間に、彼は部屋を興味深そうに見回す。

来客を想定していなかった室内は、雑誌や着替えなどが雑然と置かれていて少し恥ずかしい。
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