甘やかし婚 ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「沙也、ここに座って」
私の荷造りが少し落ち着いたのを見計らって、郁さんが私をふたり掛けのダイニングテーブルに呼び寄せる。
向かい合って座ると、郁さんがスーツの胸元から大事そうに一枚の紙を取り出した。
「これを書いてくれ」
目の前に広げられた茶色い縁取りの紙には“婚姻届”と記載されていた。
ドクン、と心臓がひとつ大きな音をたてた。
初めて目にする書類をじっと凝視する。
夫となる人の欄はすでに彼の名前が記入されていて、証人欄には風間さんの署名があった。
そして私の欄にはなぜか塔子の署名があった。
「なんで、この署名……」
「内々に頼んで先日記入してもらった……沙也が了承した場合のみ使ってほしいと切実に訴えられた。いい友人だな。もちろん結婚については他言しないと言われたよ」
親友が今日、私の気持ちを何度も確認した理由がやっとわかった。
親友の心遣いに胸がいっぱいになった。
きっと塔子は私に黙っていたことを心苦しく思っていたはずだ。
そしてこの方法が必ずしも正しいとは納得していなかったかもしれない。
それでも署名してくれたのは、きっと純粋に私の意思を尊重して応援してくれたからだろう。
こみ上げる思いと涙を瞬きを繰り返し、やり過ごす。
私の荷造りが少し落ち着いたのを見計らって、郁さんが私をふたり掛けのダイニングテーブルに呼び寄せる。
向かい合って座ると、郁さんがスーツの胸元から大事そうに一枚の紙を取り出した。
「これを書いてくれ」
目の前に広げられた茶色い縁取りの紙には“婚姻届”と記載されていた。
ドクン、と心臓がひとつ大きな音をたてた。
初めて目にする書類をじっと凝視する。
夫となる人の欄はすでに彼の名前が記入されていて、証人欄には風間さんの署名があった。
そして私の欄にはなぜか塔子の署名があった。
「なんで、この署名……」
「内々に頼んで先日記入してもらった……沙也が了承した場合のみ使ってほしいと切実に訴えられた。いい友人だな。もちろん結婚については他言しないと言われたよ」
親友が今日、私の気持ちを何度も確認した理由がやっとわかった。
親友の心遣いに胸がいっぱいになった。
きっと塔子は私に黙っていたことを心苦しく思っていたはずだ。
そしてこの方法が必ずしも正しいとは納得していなかったかもしれない。
それでも署名してくれたのは、きっと純粋に私の意思を尊重して応援してくれたからだろう。
こみ上げる思いと涙を瞬きを繰り返し、やり過ごす。