黒猫とばぁちゃん【短編】
それから寒い冬を僕は、ばぁちゃんと一緒にあったかく過ごし、やがて春がやってきました。

ある日、ばぁちゃんの家に人が訪ねてきました。

ばぁちゃんは、1人で住んでいたし、あまり外にも出かけず、他の人間が訪れるのは珍しいことでした。

僕は、ばぁちゃんとお客さんの様子に耳を傾けながら、お気に入りの毛布でうたた寝していました。

「お母さん、体の調子も良くないんだし、もう一緒に暮らさないとダメですからね。しかも、知らなかったですよ、いつの間にか猫なんて飼いはじめちゃって…。家は紗季がアレルギーだし猫は一緒には連れて行けないですよ。」

「なら、やっぱり私はここにいるよ。」

「ダメです。また、倒れて入院でもしたらどうするんですか。その猫だってまだ小さいんだし…。」

「そぅだねぇ…。きっと、ばあちゃんの方が先に死んじまうだろうし、最後までは面倒みれないだろうねぇ…。」

「だから今のうちに、ちゃんと飼ってもらえる家を探した方がいいんですよ。その猫ちゃんのためにも。」

「そうだねぇ…私がいなくなったら、クロが独りぼっちになってしまうしなぁ…」


ニャ~?
ばぁちゃん?


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