本気の恋を、教えてやるよ。



「妻夫木、具合悪いの?」


とりあえず梓ちゃんを外に連れていこう、と梓ちゃん支えるようにして立ち上がった時、不意に前方から聞こえてきた声に心臓がドクンッと跳ねた。


こ、この声は──……。


聞き覚えのありすぎるその声に顔を上げられずにいると、その声の主が段々と近づいてくるのが足音でわかる。


そして、床に落としたままの私の視界にスニーカーを履いた爪先が入り、私と梓ちゃんの上に影が落ちた。


「稲葉……?妻夫木、具合悪いの?」


その人──駒澤くんは、私が彼の声を聞き逃したと思ったのか、もう一度そう問いかけてきた。


さすがにこの距離で聞こえなかったふりはできない。


何か返事をしなきゃ……そう思うけど、駒澤くんのことを意識しすぎて、喉の奥がひりついたように言葉が出てきてくれなかった。


せっかく心配して声掛けてくれたのに。

絶対、不審に思われてるよね……ああでも、声を出したら、情けなく震えてしまいそうで。




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