本気の恋を、教えてやるよ。
デート、という言葉が慶太の口から聞けるだけで嬉しい。
デートなんていつぶりだろうか。少なくとも、普通の恋人がするような甘いデートはここ一年半以上記憶になかった。
「どこに行く?」
「ああ……それは俺が考えておくから、任せて」
「ほんと?楽しみにしてる」
──そう応えた時の慶太が、どこか寂しそうな表情をしていたことに、すっかり浮かれていた私は気づかなかった。
そして、クリスマス当日。
「……稲葉さん、今日はいつにも増して可愛いわねえ〜、デート?」
「えっ!?」
もう少しで定時だ……!なんてソワソワしながら仕事をしていたら、唐突に同じ部署の先輩からそう言われて思わず声が裏返ってしまった。
そんな私をよそに、「あ、それ俺も思いました」なんて別の声まで飛んでくる。
そ、そんなに分かりやすかっただろうか……。
「は、派手ですか?」