本気の恋を、教えてやるよ。



急に不安になって訊ねると、その先輩はにこにこ顔で首を振る。


「ぜ〜んぜん!とっても可愛いわよ」

「あ、ありがとうございます……」


そう真っ直ぐ言い切られると、それはそれで恥ずかしいのだけど……。


でも確かに、あんまり着ないワンピースに、メイクもいつもよりは濃いめだから分かる人には分かるのかもしれない。


照れ臭さを誤魔化すように前髪を直すふりをしていると、丁度終業を報せるチャイムが鳴る。


「……」


無言で片付け出す私に、どこか生暖かい視線が注がれて、ちょっと気まずくなりながら私は帰り支度を進める。


クリスマスだし、金曜日だからか、他の人もちらほらと帰る準備を始めていた。


パソコンを閉じ、鍵付きの机に仕舞い、タイムカードを切る。


白いファー付きのコートを着ながら、「よし」と小さく呟くと、にこにこ顔のままこちらを見つめていた先輩とばっちり目が合った。



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