本気の恋を、教えてやるよ。
「楽しんできてね〜」
「はい。……お疲れ様でした!」
ヒラヒラと手を振ってくれる姿にぺこりと頭を下げ、会社を出る。
待ち合わせは、駅前のコーヒーショップの前。
それは慶太と付き合いだした時に二人で決めた共通の待ち合わせ場所で、そこにしよう、と言われた時、覚えててくれたんだ、と感動した。
そんな些細なことさえ嬉しくて、待ち合わせ場所に向かうまでの頬が緩んでしまう。
足早に待ち合わせ場所まで向かうと、すでに慶太が待っていた。黒いロングコートに、ネイビーのマフラーに鼻先を埋めながら両手をポケットに突っ込んでいる。
「慶太!」
少し離れたところから声を掛けて、手を振りながら駆け寄ると、顔を上げた慶太がふわりと微笑った。
「茉莉、おつかれ」
「……っ、」
その柔らかい笑顔にまた、きゅん、と胸が締め付けられる。
き、今日の慶太、いつもよりも更に甘いな……。