本気の恋を、教えてやるよ。



本当に慶太、一体どうしちゃったの?──とは聞けないのが、私の弱いところ。


原因を突き止めて、その結果この優しい慶太が壊れてしまうのが、怖くて。


ひと時だけでいい。

あともう少し、優しかった彼との余韻に浸りたい。


「今日、どこ行くの?」

「短めの映画一本観て、夜ご飯たべよ」

「いいね!」


ふふ、と頬が緩む。


こんな恋人らしいデートに、ここ最近はずっと憧れてた。諦めてもいたけど、でも心のどこかで、またいつか……と。


慶太の手が、そっと私の手のひらを包む。


それを、きゅっと握り返しながら、甘い優しさに酔いしれていた。


これが、夢だとしたっていい。

でもそれならばどうか、醒めないで。




「はい」

「えっ、あ!チケット代……」


映画館に着いて早々、差し出されたチケット。


用意してくれてたのか……!と慌てながら財布を出そうとした私を、慶太は笑って止めた。



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