本気の恋を、教えてやるよ。



「いいよ。ここは俺に払わせて」

「え、でも……」

「……彼氏の特権、奪うなよ」


ね?と窘めるように首を傾げられては、もう何も言い返せなくて。


前までの慶太なら、自分の分のお金だけ私に持たせて買わせてた。きっとそう。


「なに?どうした?」

「えっ、あ、いや……」


まさか、前の慶太と今の慶太を比べて呆然としてました、なんて言える訳もなく、曖昧に笑うと、ふ、と慶太も口元を緩める。


それから、少し困ったような顔で、何も言わずに私の頭にぽん、と手のひらを乗せた。


……もしかして、私が前の慶太のこと考えてたの、分かっちゃったのかな。なんて。


飲み物買ってくるわ、と売店に向かった慶太の背中を見ながら、少し後ろめたくなってしまった。




「やー、面白かったね!」

「……ホラー映画をそこまで生き生きとした顔で楽しむのは、茉莉くらいだろうな」



< 213 / 392 >

この作品をシェア

pagetop