本気の恋を、教えてやるよ。
「いいよ。ここは俺に払わせて」
「え、でも……」
「……彼氏の特権、奪うなよ」
ね?と窘めるように首を傾げられては、もう何も言い返せなくて。
前までの慶太なら、自分の分のお金だけ私に持たせて買わせてた。きっとそう。
「なに?どうした?」
「えっ、あ、いや……」
まさか、前の慶太と今の慶太を比べて呆然としてました、なんて言える訳もなく、曖昧に笑うと、ふ、と慶太も口元を緩める。
それから、少し困ったような顔で、何も言わずに私の頭にぽん、と手のひらを乗せた。
……もしかして、私が前の慶太のこと考えてたの、分かっちゃったのかな。なんて。
飲み物買ってくるわ、と売店に向かった慶太の背中を見ながら、少し後ろめたくなってしまった。
「やー、面白かったね!」
「……ホラー映画をそこまで生き生きとした顔で楽しむのは、茉莉くらいだろうな」