本気の恋を、教えてやるよ。



諦めないから。そう啖呵を切ったはいいものの、どうすればいいのか分からず何も出来ないまま。……アイツの心に、隙も出来ないまま。


「どうしろっつーんだよ……」


白い息と共に弱音が零れる。


ふと、通りかかった公園に、傘もささずに誰かが蹲ってるのが見えて足を止める。


……こんなところでしゃがみ込んで、何してんだ?


何だか背丈が稲葉に似ている。たったそれだけのことで俺はもう無視できなくなって、公園へと足を踏み入れる。


もしかしたら具合悪くしてるのかもしれないし。


そんな風に言い訳をしながら、そんなはずないのに、近づけば近づくほど、それはよく知る女の子に似ていて──そして、それが本当に稲葉だということがわかり、驚愕する。


「稲葉!?」


思わず叫ぶように呼びながら駆け寄ると、稲葉はびくりと肩を震わせた。


なんで、こんなところに。



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