本気の恋を、教えてやるよ。



──正直、面倒そうだなあというのが本音だった。


多分、他の人もそう思っていたと思う。


確かに元々うちの会社はなんだかんだとイベントやサークルが多めで、社員同士の交流の場が沢山ある。


でも、それを好ましいと思う人もいれば、仕事とプライベートはきっちり分けたい、と厭う人が一定数居るのもまた事実で。


自分の通常業務も楽ではないのに、更に企画なんて……そう尻込みしてしまい、係に就いてくれる希望者を募ったが、当然ゼロだった。


前例があるならまだしも、初の試みというのもまた皆を消極的にさせていたように思う。


じゃあジャンケンで決めましょう。といい大人たちの集まりで言い出すわけにも行かず、進行役だった書記の男性が、うーん、と悩み、あ、と目をぱっちり見開いた。


その時、私や慶太の方を見てたから……少し嫌な予感はしていたのだ。


「委員長、推薦なんですけど、筒井さんと稲葉さんはどうでしょう」



< 269 / 392 >

この作品をシェア

pagetop