本気の恋を、教えてやるよ。



男性がそう言った瞬間、声を出さなかったのは奇跡だと思う。


呆然とする私に、男性は名案だと言わんばかりににこにこと続けた。


「確か二人は同期だったよね?同期なら、企画もしやすい筈ですし、二人ともまだ若いから実験台……メンバーも集まりやすそうじゃないですか?」


ほら、場合によっては休みの日とかに集まってもらったりしないとですし。と笑顔の男性に、委員長を務めている総務部長も、納得したように頷いた。


確かその人は慶太と同じ営業部に所属する、謂わば慶太の先輩で、余計に話を振りやすかったのだろう。


何も答えない私と慶太を他所に、委員長はホワイトボードに私たちの名前を書いてしまい、勝手に決議を取り始めたのだ。


「満場一致のようだし、二人ともお願い出来ますか?」


何を考えてるのか分からないような顔で、そう訊ねてくる委員長に、できればそれは先に訊いて欲しかったんですが……と泣きたくなる。



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