本気の恋を、教えてやるよ。
「……今まで、本当にごめん。それから、ありがとな。茉莉と出会えて、茉莉のこと好きになって良かった」
沢山傷つけたけど、本当に好きだったよ。そう言った慶太は、躊躇いがちに両手を広げると。
「──なあ、最後に抱きしめてもいい?」
私は、その言葉に慶太の胸へと飛び込んだ。
慶太は驚いたように少し体勢を崩しながらも、やがて優しく包み込むように抱きしめてくれる。
「……離れるって言っても、絶交とかじゃないから。友達に、戻るだけ」
明日から話し掛けてくれないとか無しね、寂しいから。
そう揶揄うような優しい慶太の声が胸に沁みる。
「ちゃんと伝えてきな、茉莉の気持ち」
私を送り出すような、親愛のキスが頭のてっぺんに振る。きっとこれが、最後のキスだ。
ねえ、慶太。
慶太と付き合って、苦しいことも、泣きたくなることも、沢山あったけど私、後悔してないよ。
初めての彼氏が慶太で良かった。
入社したばかりの春の日、話し掛けてくれたのが慶太で良かった。
……慶太と付き合えて、私も、幸せでした。