本気の恋を、教えてやるよ。



「おはよう、佐川くん。……ごめんね」

「え、何が?」

「空気悪くしちゃって……」


駒澤くんが不機嫌なことにより、駒澤くんの周辺がピリピリしてしまっている。チラチラと遠巻きに見る人も出ているくらいに。


これから合宿なのに申し訳ないと謝ると、佐川くんは可笑しそうに笑った。


「いーのいーの!あいつ、動揺してるだけだから!」

「え……?」


いや、もう絶対怒ってるよ?

眉間にシワ寄りまくりだもん。


「楽斗も今更どんな態度でいればいいのか分からなくなってるだけだからさ。……大丈夫、怒ってないよ。あいつは」


そうこちらを安心させるように微笑んだ佐川くんが、私の頭を優しく撫でた時。


「壱人!早く来い!」


という怒声が駒澤くんの方から飛んできて、はーい、と佐川くんは軽く返事をした。


それから、立ち去る間際に私をちらっと見ると「ほらね?」と悪戯っぽく舌をちろりと出して。



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