本気の恋を、教えてやるよ。
私のワガママでまた付き合ってもらっているので、朝食くらいは自分の力で頑張らなきゃ。
そんなことを思いながら卵焼きを作りつつ、ふと去年もこんな光景があったことを思い出す。
あの時も、こうして朝食作りをしていたら駒澤くんがやって来て──。
感傷に浸るように去年のことを思い起こしていると、どこからかザッ、ザッ……、と砂利を踏みしめる音が聞こえてきて。
規則正しいそのリズムは、だんだん大きくなったかと思うと、途中で止まった。
「……稲葉」
随分と懐かしく思う声が、私の名前を呼ぶ声が、胸を締め付ける。
目の奥が焼けるように熱くなるのを感じながら振り向くと、あの日と同じ格好で、駒澤くんがそこに立っていた。
「駒澤くん……」
「……前にも、こんなことあったな」
駒澤くんも同じことを思っていたようで、口元を僅かに緩めながらそう言う。
それから、私の手元を見て、ふ、と笑った。