本気の恋を、教えてやるよ。



以前は、そんな姿も気を許してくれてるのかな?と嬉しかったが、今ではただただ悲しくなるだけだ。私とのデートなんて、どうとも思ってないんだろうなって、わかってしまって。


「おはよ……寝てた?ごめんね」

「まあ。……入れよ」


素っ気なく言われ、中に足を踏み入れる。


でも、今日はデートをしに来たわけじゃない。


中々靴を脱ごうとしない私に、リビングに向かおうとしていた慶太が気付き、怪訝そうに私を見る。


慶太は玄関先まで引き返してくると、少し首を傾げた。


「何やってんの?早く上がれよ」


そう言って、私の腕を掴む慶太。


慶太はそのまま目を閉じると、私へと顔を寄せてきて──。


私は咄嗟に、慶太の口元を自分の手で覆っていた。


「は?」


不機嫌そうに洩らした慶太の表情があまりにも冷たく、苛立っていて、背筋が冷える。


慶太からのキスを拒んだのはこれが初めてで、尋常じゃないくらい心臓がドキドキと嫌な動悸を奏でていた。



< 62 / 392 >

この作品をシェア

pagetop