角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。

ヒソヒソと私のことを見て、何かを言っているみたい。


ううっ、やだなぁ……。あとでなにか言われちゃうかな。怖いなぁ。


「瑠衣、なんて?」


すぐそばにいたつばきちゃんの声だけは聞き取れた。


「そ、それが……今日作ったお菓子食べたいって言われちゃって……」


コソッと小声でつばきちゃんにだけ教えると、「あーなるほど」と納得して笑った。


ほんとならつばきちゃんにもついて来てほしいけど……。


「じゃあ瑠衣、頑張って!」


と、ニヤニヤ笑われる。


もうーっ、他人事だと思って……!


それから私は、無数の視線を浴びながらお菓子を抱えるようにして先輩の元へ向かう。


「じゃあ行くか」


と言って、私の手を掴んで歩き出す先輩。


あれ、ここで渡してさようなら……じゃなかったのかな。“行くか”って、今からどこかへ行くってこと?


「あの、先輩、どこへ……」


声をかけてみるけど、先輩は前だけを見て歩く。
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