ゆるふわな君の好きなひと
「何……?」
「ねぇ青葉、テスト範囲教えて」
「え?」
「ヒマじゃないけど、勉強だったら付き合ってくれるんでしょ。だったら、今からおれに付き合って?」
可愛く首を傾げて微笑む由利くんが「そしたら離す」と交換条件みたいにひとこと付けくわえて、わたしのスカートをクイッと引っ張る。
やや下に垂れた大きな目に見つめられて、「いやだ」とは言えなかった。
「わかった……」
「やった。ありがと、青葉」
ため息交じりにつぶやくと、ふにゃっと嬉しそうに笑った由利くんが、約束どおりスカートから手を離してくれる。
眞部くんや他のみんなが由利くんのことを構いたくなってしまうのは、何かしてあげたときに向けられる、ゆるふわで可愛いその笑顔のせいなのかもしれない。
わたしもその例に漏れず……。いつも、由利くんの嬉しそうな笑顔に騙されている。