愛しのフェイクディスタンス
「俺は……っ、好きな女を手元に置いたことなんてないからな」
息絶え絶え、呼吸を整える優奈を見下ろし、雅人はネクタイを緩めた。その妖艶さに目を奪われる。
目にしたことのない姿。
触れ合える距離に、求め続けた人が来た。
「お前が好きだった男のままかどうかはわからないぞ」
「それでもいいか、なんて、悪いが聞いてやらない」
言いながら、雅人の手は優奈の着ているワンピースのファスナーを下ろしていく。
「え!? ちょ、ちょっと待って……」
「待つわけないだろう。あの男の選んだ服をいつまでも着させてやれるほど、俺は寛大じゃないからな」
雅人はどこか挑発的な笑みで、そんなことを言う。
いつだって、優奈の発言を待ち、それに応えてくれていた兄の顔は既になく。
「ほ、ほんと待ってよ……! あ、明るいまんまじゃん!」
「あの時も、明るかったろ?」
「あの時って……あ!」
確かめるような手つきで、あらわになった優奈の肌を撫でる。思わず吐息が漏れたなら、雅人の満足そうな表情が視界に入った。
「どんな女より綺麗だと思ったよ。もちろん、今も」
「……覚えてる、よね。あれ、やっぱり」