愛しのフェイクディスタンス


「もー嘘だよ、ごめん。まーくんと結婚できるなら、何だっていいってことなんだけ……ど。ん……っ」

 言い終わるよりも先に、熱い唇が優奈の口を塞いだ。

「優奈ぐらいだ、俺で遊ぶ奴なんて」
「……ん、も、待って、ごめんってまーくん」

 しまった。やりすぎてしまった。
 この一年、雅人が優奈に見せてくれるようになった恋人としての顔は、酷く中毒性のあるもので。味わいたくて、ついからかってしまう。
 
「やられてばかりだと思うなよ」

 そして、やりすぎてしまうとスイッチの入った雅人に返り討ちに合う。
 お決まりの流れだ。

 細められた瞳の奥が光って、まるで牙を持つ獣の如く優奈の首筋に歯を立てる。

「……んん! 痛、痛いってば!」
「痛いだけじゃないだろ?」

 そう。甘噛みの後の、優しい舌遣いが好きだ。
 そんなこと雅人はもうとっくに知り尽くしているから。

「もう、ほんとごめん、許してよ、まーくん」
「優奈次第だな」
「私が帰ったら、少し仕事に出るって言ってたじゃん」

 会話の合間にも、雅人の手は優奈が大きく快楽を得る箇所を的確に探る。

「そうだな、琥太郎に怒られる。でも、拗ねたままだと仕事にならない、困ったな」

 さして困っていない様子の雅人が「だから満足させてくれ」と、優奈の耳元で囁くと視界は反転。覆い被さった雅人の胸の中、逃げられない。

 たった一年で、変化を見せた二人の関係。この先どれだけ移ろうのだろうか。
 ぼんやりとした思考の中、そんなことを考えながらも優奈は与えられる刺激に酔いしれたのだった。


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