愛しのフェイクディスタンス
――三年間、欠勤したことはなかった。
その為優奈は初めて知ることになる。
二日も休むと、自分の首を絞めるだけだったという事実。
病み上がりを三日間働き終え、ようやく週末までたどり着き、フラフラとした足取りで最寄りの駅を出て自宅アパートへと歩いていた。
(ははは……雑用でこんなボロボロになってる女とか、どうすりゃいいのよ)
恭子が言うところの"雑用"は、この三年優奈の人生、その大部分をかけてこなしてきたもの。
凄まじい嫌味責めと遅くまでの残業。休養のエネルギーなど、この三日で奪い取られてしまっていた。
もちろん朝子だって変わらず。
今日は午後イチで郵便局に向かう途中、開店休業中のマッサージ店にいるはずの朝子が男性と腕を組んで歩いているのを見かけた。
もう何度も見ている光景だが、仕事を放り出されて、病み上がりの締めが忙しい時でさえも、何も手伝ってはもらえない。積もり積もった苛立ちは、優奈の気力も体力を奪う。
『そんなしみったれた雰囲気で出社されてもねぇ』
『こっちが体調わるくなっちゃうわよ』
『もっと出来る子雇いたいわ。』
静まる夜の住宅街。数日間の散々な言われようが疲れた頭の中で残響する。
(だめだめ、負けちゃダメだって。まだお金全然貯まってないじゃん)
ふるふると首を振って、それから、大きな溜息をひとつ。おかしいな、と思う。
まるで辞めるために働いてるみたいな思考は、辿ればどこに繋がっているというのか。
突き詰めようとすれば、決まって吐き気がする。
こんな時身体を重ね、気分を紛らわせてくれた彼氏もいなくなった。
友人たちもそれぞれの場所で暮らしていて、なかなか頻繁に集まることもなく。
暗い夜道、ひとりきり、帰り道は心細くなってくる。