愛しのフェイクディスタンス

「余計なことかもしれないけど、作って大丈夫かな」

 それ以上飲んで大丈夫なのかと、恐らく言われている。
 
「大丈夫です、ください」

 しかし、跳ね除けて言った。
 その言い方の可愛くないこと……そんなの優奈が一番よくわかっている。

 だから男に浮気などされるんだ。と、考えて改める。
 いや、あれなら優奈が浮気相手だった。
 男の不自然さに気がつかず舞い上がって、挙句本当の彼女を傷つけたんだろう。
 合コンで意気投合し、付き合って一年、その結果がまさかの”私の方が浮気相手でした”という、オチだった。

「……はぁ、ダメ。ちょっと、お手洗い」

 余計なことに脳内をを支配されてしまったせいか、少しだけ気分が悪くなった。
 立ち上がりお手洗いに向かうため一歩踏み出すと、ぐらりと世界が揺れる。 いや、違う、床がうねった。
 とにかくおかしい。目の前の景色が認識できない。
 チカチカと眩しいのかと思いきや霞んでいく。

(え、何……気持ち悪い)

 マスターの声が聞こえているような気がするけれど返事ができなくて、優奈はカウンター席の椅子に腕をかけて、けれどそれでは体勢を保っていられずにその場にへたれこむようにして座った。

「大丈夫ですか」

 その時頭上から男性の声がした。マスターの声ではない。
 ドクンドクンとやけに騒ぎ出す胸。

(この声……)
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