愛しのフェイクディスタンス
手際よく片付けを終えてしまった雅人はまだお風呂には向かわない。
代わりにソファーに座ったので、優奈も隣にピタリと座った。
「……近くないか優奈」
「え? そ、そう? 昔はよくこうやって一緒に座ったよね」
なんて、懐かしんでいたら雅人がまた頭を撫でてきた。
ポンポン、と何度も繰り返されるリズムに、ついあくびが出る。
(……眠い、おかしい……睡眠ならちゃんと取ってるの、に)
意外と荷造りは疲れるものだ。久々の料理も。
何よりドキドキする雅人の大きな手は、それと同時に安心もする。
「眠い?」
「ん? んー、寝ない」
「どうしたんだ」
「まーくん、を……ムラッとさせ、なきゃ……」
本人目の前に何を言ってるんだと冷静な、頭の奥深く存在する優奈が主張するけれど。
相手に出来ないくらい急激に眠い。
ついに目が開けていられなくなって、すぐ傍に見えてしまった雅人の首。鎖骨。
「ふふ……ここ、好き」
寝ぼけているからか? それとも夢だからなのか?
緊張から解き放たれ大胆になれた優奈は、雅人のネクタイが緩められ露わになっている鎖骨に軽くキスをした。
……怒られないからやっぱり夢かもしれない。
やがて、ゆらゆらと身体が宙を舞ってるような感覚。
「お前が近くにいる間は、なるべく一緒にいたかったんだけど」
雅人が何かを話しているのに、優奈は目を開けることが出来ない。
「……厳しいな」
切なそうな声はどうして?
「どうしたって可愛い」
優奈にとって都合の良すぎるセリフだ。
ああ、もうとっくに夢見てたんだっけ。
だったら、いいや。優奈はそう思って手を伸ばして、大好きな首元に絡みついた。
息をのむ緊張した空気。
(……夢の中で、くらい)
ドキドキしてね。
優奈は心の中で、静かに願っていた。