愛しのフェイクディスタンス
「やめろ、マキ。優奈が怯えてる」
「え!? やだ、ごめんなさい! もう私可愛い女の子とハムスターに目がないのよ」
マキ、と口にした雅人。それはもしかしてさっき話題に出た、その人でないのだろうか。
「マキ……さんって、さっき話してた方ですか?」
「やだなに、さっき話してたって、高遠くん何吹き込んだのよ」
優奈の問いかけに雅人が答えるよりも早くマキと呼ばれる女性は、会話を進めていく。
「別に何も」
「ふーん、まあいいわよ。そんなことより優奈ちゃん。今日からよろしくね、私も管理にいるのよ~」
「そんなことって何だよ」
ニコニコわらう彼女に、雅人は一見冷たい声で返すが、優奈に対する”お兄ちゃん”の顔でもなくて、かと言って先程挨拶を交わした受付の女性に対する事務的なものでもなくて。
何やら親密そうだ。
優奈の入っていけない雰囲気に、ただ黙っているしか出来ない。
「あ、優奈ちゃん。私、真木文子。名前がオシャレじゃなくて気に食わないからマキちゃんって呼んでね」
「マキさん! よ、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる優奈にマキは優しい口調で。
「あららら、頭なんて下げなくていいのよぉ! ここはみんなわりとフラットな関係だし、何より高遠くんが直々に連れてきた優奈ちゃんに頭下げられたらみんなビビって仕事にならないんじゃ?」