無理、俺にして

下の方から、声がして。

まさかと思って視線を落とすと、あっくんが血眼でこちらを見ていた。

そう、血眼で。


「オリ!! てめ、今ゆめちゃんに……!!」

「やば、行くよゆめ」

「わっ……!!」

「EXミッションクリア目指して走れ~」

「ええっ!?」


あっくんの怒号を背中に受けながら、折原くんに手を引かれて走る。

見慣れた廊下が、嘘みたいにキラキラとして見えて。

恋をするとこんなにも、世界が違って見えるんだ。


これからこの人と、折原くんと一緒にいろんなことを経験していく。

楽しいことも嬉しいことも
悲しいことも苦しいことも
恥ずかしいことも。


「折原くんは慣れてるかもしれないけど、私はちゃんと折原くんの彼女できるかな」

「何言ってんの、俺、ゆめが初彼女だヨ」

「えっ!?」

「花屋のおばさんにもちゃんと言ったのに、聞いてなかったんだ」

「き、緊張してて」

「くふ」

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