無理、俺にして

「……ん?」

「あれ?」


隣に座っていたはずのあっくんも同時に立ち上がるものだから、ついそっちを見てしまった。


「ゆめちゃ、じゃなくて音原さん、どうしたの?」

「あ、いや別に……え、円城くんこそどうしたの?」


あっくんはいたずらっこのような笑顔を浮かべてピースして見せた。


「昼休み始まりと同時に鬼ごっこ開始なんだ!!」

「え、鬼ごっこ?」


昼休みと同時って、お昼ご飯も食べずに?

というか、待って、そこじゃない。


「いつめんで俺だけ一人クラス違うから俺が鬼。早く行ってタッチしなきゃ」

「そ、それってやっぱり折原くんも参加してる!?」

「もちろん。ただ、オリは鬼ごっこというよりかくれんぼだから、見つけるのが大変なんだけど今日こそは見つける! そして捕まえる!!」


私もあっくんと一緒に行けば、折原くんに会えるかもしれない。

大丈夫、足には結構自信あるし、男子のおふざけ鬼ごっこに引けはとらない……はず。


「わ、私も鬼やる!!」

「ええっ、どうしたの急に」

「は、走りたい気分なの!」


なんとしてでも、とっ捕まえてやるんだから……!!

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