無理、俺にして

「うーん……」


この数日で、一体何がゆめちゃんの元気をここまで無くさせてしまったんだろう。


「はあ~……」


思い当たる節はないわけじゃない。


「まじで、ダルリンの壁ぇ……」


というかこいつ以外に思い浮かばない。


「……」


俺は隣で運動用具を整理しているオリをじっと見つめる。
……んだけど。


「なんじゃ秋音よ、そんなに見つめて」


自分の体を抱きしめるようにして「穴が空いちゃうぜよ☆」と言い放つその姿は、いつも通りすぎて。
原因はこいつに決まっているのに、やっぱり違うのかも、とか思ったり思わなかったり。

何せこいつは、ほとんど自分のことを話そうとしない。
質問してもうまくかわされたり話を逸らされたりして、いつもオリのペースになってしまう。


「目覚めよ秋音、手を動かさにゃ帰られん。今こそ覚醒の時!!」

「うおおお元気一千倍!!」

「アキトンマン!!」


……こんな調子だ。
いや、俺がバカなだけなのかも……?

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