慶ちゃんが抱いてくれない!
寝室で、明かりを間接照明に切り替えた。
ベッドの中で俺は真穂を後ろから抱き寄せる。
結局何を話すか決められず、すごい長い時間真穂と一緒の時を過ごしてきたのにもうすぐそれが終わるという実感がまだ湧かない。
俺達には珍しく少し沈黙が続いた。
「…慶ちゃん?」
「ん?」
真穂が沈黙を破ってくれて、少しホッとした。
「これからもし良い人が現れたら……私の事は気にしないで大丈夫だからね?」
「んー……わかった」
「ぜーったいわかってなさそうな返事」
「わかったって…もし現れたらな」
俺は真穂のおばあちゃんにかけられた、生涯真穂以外愛せなくなる呪いの事は真穂には今まで話さなかった。
どちらにしても、真穂には一生分の愛と俺達の宝物の桃菜を授けてもらったから真穂がいなくなっても俺は一生真穂のことを想い続けるつもりだ。
「桃ちゃんの事も大切にしてくれる人ね!でも…」
「でも?」
「でも……慶ちゃん。今度生まれ変わった時はまた私と一緒になって欲しいな……いいかな?」
「当たり前だろ。俺が行くまで待ってろよ?今度はもっと長い時間一緒にいような」
「うんっ、今度はおじいちゃんとおばあちゃんになるまで一緒にいようね」
真穂は俺の方を向くと、キスをしてくれた。
涙が溢れて止まらなくなる。
「慶ちゃん。私と出会ってくれてありがとう……ヒックッ……いつもワガママ聞いてくれてありがとう……好きになってくれてありがとう。私、慶ちゃんに愛されてすっごく幸せだったよ……」
真穂は涙を流しながら、昔から変わらない可愛い笑顔で俺に微笑んだ。
「どういたしまして。俺の方こそ……今までありがとう……真穂、生まれて来てくれてありがとな。愛してるよ…」
「私も……愛してる。桃菜の事よろしくね」
そう言って俺から真穂にキスをした。
そして……
俺の腕の中で眠った真穂は再び目を覚ます事はなかった。