唯くん、大丈夫?
いや、ひど。

そりゃ叩かれるわ。

ひどいこと言った自覚はあったけど、改めて思い返してみると、本当にひどい。

つーか平気なわけねーだろ。バカか。

優花に言われたことをそのまま言い返してやろうと出たセリフだったけど、

本当に他の男のところ行ったらどうすんだよ。

優花が自覚ないだけで、優花と付き合いたい男なんていくらでもいる。



「…」



俺は箸を置いて立ち上がった。「ん?どうした、唯」


珍しく慌てる俺に親父が声をかける。




「…あー、ちょっと部屋に忘れ物。大丈夫。ちゃんと食うから」


そう言い残して自分の部屋に駆け戻り、スマホを触ろうとして手にネバネバがついてることを思い出し、急いでウェットティッシュを探して拭う。



なんて送る?

ごめん…?

ごめんで済むのか?



とにかく会いたい

会ってちゃんと『嘘だよ』って

『大好きだからどこにも行くな』って







ようやくネバつきが取れた手で、一昨日ぶりにスマホを開いた。






「…!」









人は心が動きすぎると

なんの前触れもなく涙が出ることがあるなんて

俺は知らなかった





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