唯くん、大丈夫?
「あ、束縛彼氏に怒られるか」


長嶺君がサッとリュックにノートを戻した。


「あぁー!!」


すかさず立ち上がって手を伸ばす私を、

長嶺君は口を結んだまま口角を軽くあげて私を見下ろしている。


「……ん?」

「…貸してください」

「え?なんて?」

「貸してください!お願いします!」

「いいよ。はい。」


長嶺君がノートを差し出してくれる。

ムカつく。

なんてムカつく顔なんだろう。

癪だけど、こればっかりは仕方ない!



「ありが…「じゃあ今度デートしよっか」

「え?」


お互いノートを掴んだまま、長嶺くんと視線がぶつかる。


デ、デート?

デートってあのデート?




「…」


「…傷つくなぁ。そんな天国から地獄に落とされたみたいな顔されると。」


長嶺君がちょっと切ない顔をする。


「え…と…」


どうしよう

困る。困るよ。

だって私には唯くんがいるし、


「……ブッ」


長嶺君が吹き出した。


「あっは!冗談、冗談!そんな申し訳ない顔すんなよ。はぁーおもしれー」


「…」



誰かに対してこんなに殺意を抱いたのはいつぶりでしょうか?



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