唯くん、大丈夫?
「それでは両者、位置について」






審判役の狼の恰好をした男の子の言葉を合図に、美琴の対面にいる筋肉ムキムキのジャイアンみたいな他校の男子が肘をついて手を差し出す。


「かわいい赤ずきんさん、腕折っちゃわないか心配だなぁ」


下心ダダ漏れの顔…。


そこに美琴もそっと肘をついて、綺麗な手で相手の手を握る。


「え、そんな強いんですか?やだなぁ」








…私は知っている。

美琴の一見無表情に見えるあの顔は、

悦(よろこ)んでいる顔だって。








「レディー……ファイ!!」


ズガン!!!!





開始の合図とほぼ同時に、腕相撲をやったとは思えない音が鳴り響いた。















「勝者、赤ずきん!はい、ケツバットでーす」

「…え?」





一瞬で勝敗が決まり、ジャイアンみたいな男の子がポカンとする。






「手抜いてくれて、ありがとうございます」

美琴がフニャッとかわいく笑った。



その可愛すぎる笑顔につられて相手の男の子が笑って、その隙にケツバットをされて悶絶した。

それをまた美琴が嬉しそうに見ている。





…うん。美琴が楽しそうで何より。

忙しそうだからそっとしとこう。
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