唯くん、大丈夫?
電気をつけて図書室に飛び込んでくるてらちんの声を無視して、唯くんが拳を振り上げる。




「落ち着け!」




てらちんが間一髪で止めに入って、後ろから唯くんの肩を持って押さえつける。




「離せ!!あのクソ野郎、殺す!!」




唯くんは声を荒げ、変質者に食って掛かろうと激しくもがく。




「気持ちはわかる!でも駄目だ!冷静になれ、九条!」

「うるせえ!全然殴りたりねぇんだよ!!」



唯くんの凄まじい勢いに、怯える変質者が尻もちをついたまま後ずさる。




「九条!!」



てらちんが聞いたことないぐらい大きな声を出して、唯くんが少し怯んだ。



「羽根村が見てんだぞ!!」


「…!」



てらちんの言葉に、唯くんが言葉を飲み込んだ。




「お前のやることは違うだろ…落ち着け、バカたれ」



唯くんは荒い呼吸をくり返して、まだ獣が宿る目で私を見た。




「…」




てらちんが脱力した唯くんを離した。

唯くんは私から目を離さないまま歩いてくる。




その後ろでてらちんが縮こまる変質者を蹴りつけて、

「てめーただじゃおかねぇからな…」

と冷ややかな声で呟き、スマホを操作して耳に当てる。

「…大浦高校の教員ですが、股間を露出した変質者が今…はい…女子生徒が被害に遭って…」



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