唯くん、大丈夫?
「はは。そんなに仲いいのになんで付き合わねーの?」


そう言いながらゼッケンを渡してくれる種田君に、みね君が口を尖らせる。


「ね。付き合っちゃえばいいのにねー。」


そう言って私を見るみね君。


「ごめんなさい」


私はまっすぐ迷いのない目で断った。


「…これですよ。こぉーんな一途でいい男が毎日のように告ってんのに、ずぅー…っと高校んときの元カレ引きずってんだぜ?」

ゼッケンをかぶり終えたみね君が種田君に訴える。


「ひ、引きずってないよ。」

「じゃあいいじゃん。ね。付き合お?」

「ごめんなさい」

「あー!!今のでフラれるの735回目!!はー、やんなっちゃう!」

「回数えげつな…長嶺のメンタルどうなってんの?」

「僕のメンタルはお豆腐だよ。毎日ボロボロでプルンプルンだよ。」


みね君の回答に「プルンプルン?」と種田君が首をかしげる。


…お豆腐かぁ。


「白和えにしたらおいしいねぇ~」


私がヘラヘラすると、2人もつられてヘラヘラする。


「話が変わっちゃってんだよなぁ。そんなとこも好き。付き合お?」

「嫌だよ!」


私はいつものごとく満面の笑みを添える。


「っだぁーーー!!」


みね君がそう叫んだ勢いでボールをぶん投げて見事な長距離シュートを決めると、種田君が「おー。これがお豆腐メンタル君の白和えシュートか。」と拍手した。

なんそれ?

私は自分に736回も告白してきた変な男の子の背中を見ながら首をかしげた。







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