唯くん、大丈夫?
や、待って、落ち着け、落ち着こう。


いま唯くんはきっと校門にいて、万がイチ走ったとしてもあの唯くんが全力ダッシュするとは思えないから、せいぜいここまで7〜8分。

その頃私は優雅に電車に揺られているはず。

というか超マイペースな唯くんに限って、私を追って走るってことはないな。うん。


メッセージは既読になったまま返信はない。

きっと今頃『優花のくせに先に行きやがって』って思いながら呑気に歩いてるはず。

そもそもいつも勝手に私が待ち伏せしてるだけで、一緒に帰ろうって約束してるわけじゃないし。


唯くん、わざわざメッセージくれたのにごめんね。今日はそっとしておいて。


唯くんもきっと一時的に頭に血が昇っちゃっただけだよね?

美琴にフラれて相当参っててわけわかんなくなっちゃってるんだよね?

じゃないと説明がつかないよ。

だって、優花だよ?

天下の唯くんが私なんかを好きになるわけないでしょ?



『まもなく…1番線に急行電車、春寝駅行きが参ります…』



電車がプシューッと大きな音を立ててホームに滑り込む。

私は心底安堵しながら、一人スカスカの車内に乗り込んだ。
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