唯くん、大丈夫?
「あれ、ポスターの人じゃない?」






誰かの声に、車内がざわつき始める。















…唯くんだ。













本物の唯くんが、向かいのホームにいる。











心臓が、ドクドクとけたたましく鳴りはじめた。










唯くんはキョロキョロと目くばせしながらホームを端から端まで歩き回って、必死に何かを探してるように見える。


私はその姿にうまく呼吸が出来なくなっても、その姿から目が離せない。





ふいに唯くんが、こちらに顔を向けた。














その見開いた三白眼と、


バチッと視線がぶつかる。












ゴトッ。



そして私は、またスマホを落とした。












「…っ」









唯くんが、足を止めてまっすぐ私を見ている。



これから捕食しようとする肉食動物みたいな目で、向かいのホームからまっすぐ私を見ている。












唯くんと視線を交わらせたまま硬直する私に、前に座っている人が「落としましたよ…?」と声をかけてくれた。




その声で我に返り「あっ、すいません、すいません」とヘラヘラしながらおぼつかない手でなんとかスマホを拾った。
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