唯くん、大丈夫?
身体を起こしてまた視線を戻してみると、もうそこに唯くんの姿はなく

ホームの端から端まで探してみるけど見当たらず、さっきまでざわついていた人たちも何事もなかったかのようにしている。















…私、とうとう唯くんの幻覚を…?

そんな疲れてるんだ、私。

早く帰って休もう…。




『この電車は、各駅停車、西万住行きです。まもなく発車いたします…』


プルルルルル…


ドアを閉めるためのベルが駅構内に鳴り響く。


私は吊革に掴まって、ぼんやりと唯くんの幻覚が見えた場所を眺めた。




みね君には唯くんの思い出と一緒にいたいと宣言しておきながら



本当は



唯くんに彼女がいなかったらいいのに


唯くんが今でも私を好きだったらいいのに


唯くんが会いにきてくれたらいいのにって、夢見たりして



…私、ほんとバカだなぁ。

4年だよ?4年。

環境も変わる中で、4年もあったらどれだけの人に出会うか。

その間別れた相手をずっと想ってるなんて、普通あり得ない。

私が異常なんだよ。



ドア横のフレームに入った唯くんは、何回見てもかっこいい。


きっと唯くんの好きな人は、ポスターの中で唯くんと抱き合ってるような綺麗な人なんだろうな。



…本当に手の届かない人になっちゃったんだね、唯くん。



なんでさっき、少しでも期待しちゃったんだろう。

ほんと、バカ。





どうしようもなく切ない気持ちになって、

意識するよりも前に、はらりと目からしずくが落ちた。







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