唯くん、大丈夫?
パス練からシュート練に切り替えるように先生が言って、私たちもシュートの列に並ぶ。



「まぁ、唯は不本意なんでしょ?ボーッとしてる唯が悪いとは思うけど…ここはひとつ大人になって許してあげなよ。
唯がモテるのは今に始まったことじゃないしさ。」


美琴がそう言い残して、華麗なドリブルからのレイアップシュートを決めると、リングがパスッと気持ちのいい音を立てた。





美琴の言う通りだ。



あんなに最強にかっこいい唯くんがモテるのは仕方ないし、

私がちんちくりんなのも今に始まったことじゃない。

こんなことでいちいち不安になって怒ってたらキリがない。


…大人にならなくちゃ。



深く深呼吸する。




決めた。


私、強くなる。


唯くんの彼女として、強くなるんだ。



「…うぉおおお!!」



私は気合いをバスケットボールに込めて、ドリブルを始めた。



雄叫びとともにダムダムとドリブルする私にみんなが注目する。



ゴール下までくると、リングめがけてボールとともに高く飛んだ。





キスの、ひとつやふたつ!





「なんぼのもんじゃぁーーーい!!!!」







力みに力みまくった私の手から離れたボールは、全く違う方向に飛んでいく。



私が華麗に着地すると同時にボールがゴイン!と先生の頭を跳ねた。



「あ」



そしてパサッと何かが落ちた。





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