唯くん、大丈夫?

「…美琴っ、おち、落ち着いて!」


慌てて美琴の身体にしがみついて止めに入る。




「いい加減にしなよ、唯!優花をなんだと思ってるの!?」


唯くんは表情を変えないままチラッと私を見ると、また美琴に視線を戻した。




「…なんで美琴が怒ってんの?」


唯くんが静かに言った。




「は?なんでって、」


「だから、なんで"美琴が"怒ってんのかって聞いてんの。」



美琴が唯くんの言葉にピタッと動きを止めた。









「……たしかに」




美琴のスイッチが、

パチッと切り替わる音がした。





「み、こと…?」



美琴は唯くんから手を離し、遠い目をして言った。


「…私、ちょっと国際電話してくる。」



「え、え?ちょっ、美琴さん!?」



美琴はフイッと踵を返すと混乱する私を残しててくてく廊下に出ていってしまう。


ピシャッとしめられた扉に向かって伸ばされた私の手は、やり場なく宙に浮いた。




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