今日から君の専属マネージャー

改札を抜けると、雨の音はさっきよりもさらに強くなった。


「傘、開いて」


涼ちゃんに持たされた傘を開いたのを合図に、涼ちゃんは雨降る道路に足を踏みだした。

涼ちゃんが濡れないように傘をさすと、


「俺はいいから。ちゃんと傘さしてろ」 


雨に負けないように、涼ちゃんが大きな声で言った。


「でも、涼ちゃんが濡れちゃう」


「俺はいいから。それより、今日大事な資料入れてるから、鞄ぬらさないで」


「ああ」と慌てて私は傘を後ろに引く。

だけどそれでは涼ちゃんが濡れてしまう。

涼ちゃんは片手でマスクとサングラスを器用に外した。

そしてキャップのつばを、さらに下に下げて、俯き加減で進んだ。

その間も、雨はどんどん強くなる。


遠くの方で、ピカリと何かが光るのが見えた。

その数秒後に、ゴロゴロとお腹に響く音が聞こえる。

私は傘を差しながら身をすくめた。

雷は、怖くない。

だけど、苦手だ。

何度か見える稲光に体がすくむ。

低く轟く雷鳴に、涼ちゃんにしがみつく腕に力がこもる。

ぎゅっと目をつぶって、その首元に顔を埋める。

すると、雨でぬれたところが涼ちゃんの体温で温められて、涼ちゃんの匂いが濃くなっていることに気づく。

ドキドキする。

だけど、安心もする。


雷は嫌だ。

だけど、もう少し、こうしていたい。


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