イノセント・ハンド
署の方では、明日のイベントを控え、何も成果をあげられない捜査本部が殺気立っていた。

率いているのは、超エリート警視の風井 竜馬(かざい りょうま,35歳)であった。

そう、あの警視総監の息子である。

元々は、この署で、富士本の指揮下にいた。

その後は、親の力もあり異例の出世を遂げたのである。

整った容姿は、女性やマスコミ受けも良く、警視庁の顔とまで言われる存在となっていた。

『富士本課長。挨拶が遅れ、すいません。』

『いやいや、警視殿に謝られたら・・・・・・婦警達に殺されてしまうよ。ハハ。』

『明日の警備にもご協力をお願いします。』

『もちろん。それなんだが、うちに最近、心理捜査の専門家が入りましてね。協力できるのではと・・・』

『心理捜査・・・ですか。日本ではまだ実践されていないはずじゃ?』

『ああ。先週アメリカから戻った者で、姫城 紗夜と言います。』

(!?・・・)

『姫城・・・ですか。しかも女性とは。』

『ええ。アメリカではかなりの好成績で、彼女の父親は優秀な警部だった。』

『そうですか、でももう明日のことです。今はとにかく警備に注力するのが先決かと考えますので。』

『そりゃ、そうか。』

『では、私はこれから会場の最終確認へ行きますので。失礼します。』

一例して、風井警視が出て行く。


彼が一瞬見せた動揺の表情が、富士本は気になった。

考え込む富士本に、咲が事件を告げる。

『課長、誘拐事件です。』
< 23 / 57 >

この作品をシェア

pagetop